原宿のマンションの一室から始めたブランドが、いまや飛ぶ鳥を落とす勢いに・・・なるといいですが、現実的にはなかなか難しいです。
もちろんディレクター/デザイナーの感性大爆発でヒットする可能性はあります。でも T シャツ 1 型数十枚レベルが話題になったところで知れたもの。500 枚生産して販売したほうが利益が大きくなることは明らかです。
そして事業規模を大きくしていく段階では、資金調達という課題に必ずぶち当たります。
- 大量生産するための仕入資金
- 人脈のある営業担当
- 経験豊かな生産管理担当
- 感性豊かで理解力のあるデザイナー
- 腕のいいパタンナー
- すてきな店舗と販売スタッフ
- メディアタイアップ PR 費用
スモールスタートから自分の力で稼ぎ、こうした費用を捻出できればそれに越したことはありません。しかし上から順にひとつずつクリアところで、急激な成長は難しいでしょう。やるならできるだけ一気にドーン!です。
資金調達の 2 つのパターン
資金調達を行う場合、ばくっと 2 つの選択肢に絞られます。
①金融機関からの融資
まぁ一般的。できるだけ長期 & 低利で借り入れたいところですね。
だがしかし、銀行からの融資を得るにはそれなりの「数値化された」事業計画と、資金繰り計画がマストとなります。要は「うちから借りるのはいいんだけど、何に使うの?ちゃんと返せんの?」ってこと。
感性主導の人はこういうことが苦手です。かといって他に頼むとまた高い業務委託費用が発生します。頭が痛いところでしょう。
②投資家・事業会社による投資
意外と多いのがこちら。小さなブランドではこちらのほうが多いんじゃないでしょうか。①の融資とは異なり、会社に資本をドーン!と入れるパターンです。
基本的には人脈のある人が両社をつなぐパターンが多いかなと思います。もともとブランドに興味を持っていた投資家・事業会社からコンタクトを取ってくることも稀にあります。
メリットとしては資本参入なので返済の必要がないということが挙げられます。
一方使えるお金は増えますが、いままでのように自分の考えだけで使うことはできなくなります。多額の資本を投入した株主へは説明義務がありますし、常に(良い意味での)監視もされることになります。
どちらが良いかは事業の状況による
ただ事業規模が小さいうちはやはり金融機関はシビアですので、飛躍的に伸ばすための事業資金としては心もとない気がします。500 万円の融資を獲得できたところで、やれることは限られます。
志と方向性に賛同してくれる投資家・事業会社を見つけたほうが急角度の成長曲線を描けると思います。たとえ制約が増えるにしても 2 億円あったほうが、事業を伸ばすためにはいいですよね。
ですので、どちらが良いかは事業のステージや方向性によるということです。
なお繰り返しますが別に社長が自由に使えるわけではありません。ここ勘違いする人多いです。自分のお金ではなく、あくまでも事業資金です。
対等にシビアに投資家を見定める必要もある
しかし資金だけに目がくらむと失敗します。お金がある = 偉いわけではありません。
あるブランドのお話
とあるブランドがありました。創業者であり社長である男性、そして女性デザイナー、その他数名で小さいながらも切り盛りしていました。
ある日別の会社から「お金出すからもっとブランドでかくしようや」という提案を受けます。まったく知らない会社ではなかったですし、創業者は喜んで承諾しました。
そうして豊富な事業資金が入ったことで、ブランドは急成長していきます。
ところが創業者は気がつきます。なんだか自分の知らないところで、女性デザイナーと投資してくれた会社の役員が親しくしているみたいです。するとしばらくして自分とほぼ同列で、知らない人が役員のポストに入ってきました。
そこからは早いです。次の月の取締役会で、創業者はアレコレ理由をつけて解任されてしまいました。
こうしてお金と時間と労力をかけて育ててきたブランドは、あっという間に人手に渡ることになってしまいましたとさ。
へりくだる必要なんてない
主導権を握られてしまうと、こういうことも起こり得るのです。
豊富な事業資金はたしかに魅力的です。無いよりはあったほうがいいですもん。でも、パートナーとして末永くやっていけるかどうかは、対等な立場でしっかりと見定める必要があります。これは超重要。
どこぞの大きいブランドでもありましたね。
債務超過でやばい → 海外資本入れる → ブランドは手に入ったしキミはもういいや、というパターン。
アナログだけど「志」とか「想い」って重要よね
人間とは弱いもので、ある人はお金になびきますし、ある人は権力になびくこともあります。それはそれでしょうがない。
でもそれって根っこの「志」が共有・共感できていないが故だとも思います。
スタートアップ→大規模資本参入!そんなニュースはよく目にします。もちろん事業家としてそれは目指すべきひとつの通過点でしょう。でも、上述したような話も現実としてあります。
たまには足を休めて少し立ち止まり、一緒に頑張っている仲間を見渡してみる余裕を持てるといいですね。
では再見。
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