いまの構造では国内アパレル産業の 10 年後は暗い未来しか見えない

 

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以前こんな記事を書きました。

現在のアパレル業界のものづくりの傾向を記し、それからおよそ 1 年。周囲の関係者の話を聞くと、いよいよこれは「傾向」ではなく「定着」しているように感じます。

そうなると今後アパレル業界はどうなってしまうのか。ものづくりの主たるデザイナーに焦点を当てて見ていきます。

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デザイナーの役割は「デザインを考える」だけではない

ファッションデザイナーというと、サラサラ〜とデザイン画を描いて、それが一着の服になっていくと思われがちです。

しかし現実は違います。

もちろんデザインは考えますが、それと同時に「次の工程」への指示を明確に出すという大切な業務があります。

仕様書の作成と次の工程への共有と指示

次の工程への指示には「仕様書」という書類を作成します。

設計図

仕様書とはなんぞや

平絵(ひらえ)とともに、寸法や仕様についての説明などを細かく記します。工場はこの指示に従って製品を生産しますので、これが変な指示だとものすごい製品が上がってきます。

もちろん仕様書で表現しきれない部分は、参考となる製品サンプルなどを見せることも多いです。

要は思ったとおりの製品を作ったもらいたいわけです。ベースとなる説明書は必須でしょうし、足りない部分があれば補うのは当然ですね。

パタンナーとの認識合わせ

布帛アイテムの場合はパタンナーと意思疎通をしっかり行う必要があります。

なお布帛(ふはく)とは織物のこと。ニットは編物ね。

布帛アイテムは、型紙どおりに裁断された生地を縫製することで作られます。んでこの「型紙」を引くのがパタンナーです。

同じデザインでも、使用する生地によってパターンは変わります。生地によって伸縮性が違ったりしますしね。

つまりパタンナーが製品のコンセプトや着用イメージを理解していないと、「あら?なんか全然違うんですけど」という製品が上がってきます。ですので完成イメージを一緒に確認しながら進めていきます。そうして仕様書へ落とし込んでいきますので、この工程はかなり重要です。

最近はしっかりオリジナルでパターンを引くブランドは少ないようです。他社の製品を購入し、解体して丸パクリするというのも以前よりも当たり前だそうな。

工場への共有と指示

次いでデザイナーは MD とともに、専門商社や工場へ生産を依頼します。 MD はコスト感や納期を詰めつつ、デザイナーは製品をイメージしたうえで、コスト感に合わせた生地や糸、仕様を指示します。

工場は中国をはじめとする海外の場合がほとんどです。ですので過不足なく、わかりやすく指示を出す必要があります。

ということからも、しっかりした仕様書の有無により、製品の品質は大きく左右されます。

※実際には間に商社を挟むことが多いです。それは記事下部にで。

以上ざっくりですが企画〜生産前段階のデザイナーの仕事。以外と地味な仕事ですし、交渉事だってするんですよ。デザイナーって。

仕様書を描けるデザイナーがブランドに不在

さて、上記はあくまでも「私が知っていた」アパレル業界のデザイナーの話。おそらくオンワード樫山、三陽商会、ワールドといった総合アパレルは、いまもこんな感じだと思います。

しかし、いまマーケットで人気のブランド・企業の内部構造は、かなり変わってきています。

デザイナーは存在します。しかし彼らは「仕様書を描く」ことはできません。いや、描けるかもれませんが描きません。パタンナーも不在なことが多いでしょう。

じゃあどうやって、ものづくりをしているんでしょうか。誰がどうやって工場に指示を出しているんでしょうか。

仕様書を描けるデザイナーは商社にいる

そこで出てくるのが、アパレル専門商社、もしくは OEM メーカーです。

現地工場や生地付属などを一括でハンドリング

実はアパレルブランドが直接工場とやり取りすることは、あまり多くありません。開拓ノウハウもありませんし、言葉の壁も大きいです。

なのでそこの間に入り、ブランドの意図を酌みながら工場をハンドリングするというのが商社の役割です。もちろんマージンは乗りますが、自社ですべてやるよりも圧倒的に楽。

それ以外にも生地や付属の背景を多く持っていますので、企画商品グループごとに依頼する商社を分け、一気通貫でお願いすることが多いと思います。

かつてブランド内部にあった機能を商社が請け負う

かつてはこうした商社に対し、ブランドデザイナーの具体的な仕様書とともに意図を共有し、商談をしていました。

商社側は仕様書を見て「いやここはこうしたほうがコスト詰まるかも」「この希望単価でこの製品は無理〜」などと意見を出し、そうして最終的な仕様書ができあがって、それが発注とともに工場へと流れていきました。

しかし上述のとおり、いまはブランド側に仕様書を描けるデザイナーはいません。でも仕様書がないとしっかりとした物は上がってきません。

じゃあ誰がやってるの?答えは簡単です。その機能をいまは商社が請け負っているというわけです。

ブランド側のデザイナーは「デザインを考える」機能のみ。多くの場合は雑誌の切り抜きやコレクションの画像を使って「ここをこんな感じに変えて」というイメージ出しに終始しています。

ファッション誌

その意図を酌んで具体的なデザインと仕様書に落とし込んでいるのは、いまや商社のデザイナーなのです。あのショップもあのブランドも、ファッションビルに入っているブランドの 80% はこのやり方と見ていいです。

気に入らないけど win-win な仕組み

ブランド側にしてみれば、専門性を要する人員を抱えるリスクを減らし、内部コストを軽くすることができます。

商社側にしてみれば、仕事が増える=売上利益増につながります。

個人的には「ブランドさんよ、そんな丸投げでいいんかい」と思いますが、ブランド/商社双方から見て win-win な役割分担になっているというわけです。

ただし雇用ではなく業務委託がほとんど

とはいえ商社ではこうしたデザイナーは、ほとんどが正社員ではなく業務委託契約となっています。そのため複数社掛け持ちしているデザイナーも少なくはありません。

プロですし、案件ベースで仕事をするぶんにはいいでしょう。

でも「専門」商社なんだし、全員とは言わずも力のある人は正社員雇用すればいいのにな〜とよく思います。

必然的にベテランが多くなり若手を育てる環境はない

かつてはゆっくり育てる土壌があった

んでそんな状況だと、商社のデザイナーは他社で実績・経験のある「できる人」しか働けなくなります。つまりベテランばかりになりがちです。

かつてはブランドが、専門学校上がりの新卒入社のデザイナーを何年もかけて育て上げました。しかし現状では上述のとおり、そうしたデザイナーはブランド側には不要な存在になりつつあります。

そう、せっかくがんばって専門学校で学んでも、以前ほど働く場所がなくなってきています。そうしてどんどん実務スキルのあるデザイナーの数が減っていきます。

女性

10 年後も同じスキルと感性のある人間がいるとは限らない

商社のベテランデザイナーたちも未来永劫存在するわけではありません。たとえば 10 年後、ブランドの意図を酌みながら仕様書をしっかり描けるデザイナーが、いったい何人残っているんでしょうか。

失礼ですが、たとえば 40 歳のデザイナーに 10 代のギャル服デザインさせるのはきついですって。やはり感性の近い世代のデザイナーが担当すべきです。でも若くて仕様書が描けるデザイナーはどこにいるの・・・?

長い目で見た場合、そうした構造上の問題点も見えてきています。

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業界をあげて人材育成対策を打つべきじゃないの

団結

最終的には消費者が満足して購入するんであれば、どこでどんな作り方をしようがいいんですよ。売れたもん勝ち。勝てば官軍。

でも目先の効率化を優先するがあまり、 10 年後に業界全体がシュリンクしたんじゃ本末転倒です。

ブランドでも商社でもどっちでもいいんですが、日本のファッション産業を守っていくために、安心して働いて経験を積んでいける環境を提供すべきだと思います。

若手を育てること。正社員として雇用すること。

いち企業ではなく、業界横断的な組織が真剣に旗を振って考えていくべきなんじゃないすかね。

では再見。

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