誰が百貨店を殺したのか – 10 年以上続く低迷の原因 –

 

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百貨店の低迷に関する記事を読むと、

  • 長引く不況が尾を引いて~
  • 地方の人口減少が顕著で~
  • EC の台頭により~

なんてことが書かれていることが多いです。たしかにどれも原因のひとつではありますが、決定的な原因ではありません。というかこんなの百貨店に限らず、すべての小売業に共通することですよね。

それじゃあ本当の原因はなんだったのか。

以下、個人的に百貨店嫌いマンの私が、百貨店が苦戦する原因について記していきます。嫌いマンなので多少キツめにいきますが、もしも百貨店の人が読んでても許してね。

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そもそも低迷は 10 年以上前から続いている

ネットの記事を読むと、悪いのはここ最近の話かのように書かれていることも多いです。アベノミクスの割りを食ったとか。はて。

それは大きな誤りです。実際には長いトンネル(しかも下り坂)真っ最中。

まずは数字で正しく現状認識を

下記は 2003 年から 2016 年までの 14 年間の百貨店の売上高推移です。加えて、そのうちの衣料品売上高も表示しています。

※各数値は 日本百貨店協会 で公表されているものをまとめました。以下も特に断りのない限り同じです。

ざっと眺めてみると、百貨店全体でここ 14 年で前年比 100% を超えた年はわずか 4 年のみ。その他の 10 年は前年割れという状況です。

衣料品に至っては 100% 超えは 3 回しかないですね。

グラフで見ると傾向はより顕著

うーんこれぞダウントレンド。トレンドと言うには長すぎですが。

10 年前と比べると大変なことに

なお 1 年単位で見ると、前年割れといっても 90% 台なので、「めちゃめちゃ悪い感」はあまりないかもしれません。

ですので見方を変えて 10 年間前と比較してみましょう。昨年 2016 年の速報値と、2006 年の数字を使います。

おわー。※前年比と書いてますが、10年前比です。

特に衣料品は問題児

10年前と比べるとその差は歴然ですね。百貨店全体の売上高は 77% に、衣料品はなんと 64% にまで落ち込んでいます。

% ではなく差額で見ると、この 10 年で全体でなんと1兆円以上(!)も売上高が落ちています。

百貨店全体で ▲1,799 のうち、衣料品で ▲1,058 と、全体の落ち込みのおよそ 60% も占めています。一方売上高における構成比で見ると、2016 年で 32% しか占めていないわけなので、衣料品は相当問題児ということがよくわかります。

数字は正直

このように百貨店というのは、もう10年以上も苦戦し続けている業態なのです。数字は正直ですね。

こうした事実を念頭に、百貨店が死んだ原因を挙げていきたいと思います。

1. 世代の変化についていけなかった

具体的には、団塊ジュニア世代以降をまったく取り込めなかったということです。

団塊ジュニア世代

狭義では 1971 年 ~ 1974 年生まれを指しますが、体感的には 1976 年生まれくらいまで含めてもいいと思います。細かいことは Wikipedia をご参照。

人口動態的にはかなりのシェアを占めており、どの業界もこの世代をいかに取り込むことができるかに腐心しています。

そしてこの団塊ジュニア世代ですが、「編集型消費世代」なんて呼ばれたりもします。

編集型消費を行いだした世代

その前の世代と比べてみるとわかりやすいかもしれません。マーケティング上の細かな話はさておき、わかりやすくバブル世代とその後の世代で比べてみます。

かつてはメディアの打ち出しがすべてだった

その昔はメディアが「このスタイルがナウい!!」と煽れば、みな疑いもなくそのスタイルを志しました。

この服を着ろ/この曲を聴け/このビデオを見ろ/この街に住め/この本を読め/この場所でいけ/とかたくさんの命令

とラップしたのは 1992 年のスチャダラパーですが、バブル期はまさにこんな感じだったのでしょう。カルチャーに限らず、政治的なアレコレも含めてメディアの洗脳が面白いようにハマっていた時代。

(いまだにこの世代の方々は引きずってる感がありますが)

メディアに左右されず、自分で考え比較購買を行う世代の誕生

一方その後の団塊ジュニア世代から、徐々に変化が見受けられるようになりました。

たとえば一世を風靡した「渋カジ」というスタイル。これは渋谷という街から自然発生したスタイルでした。

具体的にいうと、渋谷原宿のセレクトショップと、当時の若い人たちのライフスタイルが連動してできたもの。雑誌やメディアは後追いでした。

個人的にはこの「セレクトショップ」の台頭が非常に大きかったと思います。昔のように「ここで買え」と命令されるのではなく、「自分がほしいものを自分で探して買おう」と消費者が店を選べるようになったのです。

「そんなの当たり前でしょ」と感じるかもしれませんが、つい 20 ~ 30 年前まではそんなレベルだったんですよ。

本質的な対策を打てずにいた結果、この世代以降は百貨店から遠ざかった

このように、自らスタイルを生み出し、自ら動いて購入できるようになった世代。自分のライフスタイルは自分で編集できるようになった世代。これが団塊ジュニア世代の特徴であり、「編集型消費世代」と呼ばれる所以でもあります。

もちろんそれ以降の世代はさらに変化していますが、長くなるのでここでは割愛します。

そのような特性を持つとともに、人口動態的には非常に大きなパイを占める世代。この団塊ジュニア世代に対し、百貨店はなにもしてこなかったと言っていいでしょう。

アパレルに関していえば、大手企業が「団塊ジュニア世代に向けた新感覚の~モニョモニョ」と銘打ったブランドをそのまんま入れるだけ。

いったん分断されると、それ以降の世代だって百貨店からは遠ざかります。こうして百貨店は本来取り込むべきターゲット層の変化についていけず、みすみす手放してしまったのです。

2. ショッピングモールに顧客を奪われた

これもかなり大きいトピック。ショッピングモールの隆盛です。

私の記憶によると、1998 年ごろからショッピングモールがものすごい勢いででき始めました。

当初はアウトレットモール + フードコート的な作りのものが主流でした。しかし 2000 年以降は、大手スーパーをアンカーテナントに、数多のテナントを引き入れるという形が主流になって、いまに至っています。

モールのコンセプトは時間消費

百貨店は消費者に購入してもらうために、館のスペースをぎゅうぎゅうに埋めていました。

ところがショッピングモールは全然違いました。広大な駐車場、明るい店内、ベビーカーも苦にならない広い通路、大きな書店、映画館、お手頃価格のレストラン、安いスーパー・・・などなど。

そう、モール内ですべてが揃うようになりました。そして非常に大きなこととして、家族の誰もが「気兼ねなく」「自分の好きなように」時間を潰すことができる場所ができたのです。

郊外ファミリー層を百貨店から奪い取った

とりあえずモールに来てさえくれれば、なにかしらのコンテンツにお金は落ちます。消費者は居心地の良い空間で、ストレスなく気が付かないうちにお金を使います。

こうしてショッピングモールは、主に郊外のファミリー層を百貨店から根こそぎ奪い取ったのでした。

そしてこの郊外ファミリー層というのが、上述した団塊ジュニア世代が親になった世代なんですね。シンクロしてます。

アパレルも百貨店とは違うブランドを揃えた

なおアパレルに関していうと、百貨店価格よりも 60% ~ 70% 程度の価格で変えるブランドが揃いました。さらに百貨店のように狭い店内での圧迫めいた接客もなく、広い店内を好きなように見て回ることができます。

昔は百貨店ブランドのセカンドライン的なブランドが多かったです。百貨店ブランドにネームバリューがあるだろうと思われていたからです。しかし実際の所あまり意味がないので、最近はまったくこだわっていない会社も多いです。

兎にも角にも、モールのメインターゲットである団塊ジュニア世代を親に持つファミリー層が、どちらを選択したのかは言うまでもないでしょう。

3. ファストファッションの台頭

日本では 2008 年、H&M の強烈なデビューにより脚光を浴びたファストファッション。広義ではそれ以前から展開されている ZARA や GAP もその範疇です。彼らの台頭は既存のアパレル・小売業界に大きな衝撃を与えました。

しかし私思うに、百貨店を殺したのはユニクロだと思います。

普段着はユニクロでいいじゃん

郊外ショッピングモールに行ったことがある人ならわかると思いますが、どのモールにもユニクロはほぼ必ずテナントとして入っています。ベーシックで着回しのきく商品が、(品質はそれなりにせよ)驚くほど安い価格で手に入ります。

そう、みんな気づいちゃったんですよね。「なんだ、これでいいじゃん」と。

たとえばお父さん。昔はポロシャツ 1 枚買うにしても、百貨店の平場で 1 枚 9,000 円でした。それがユニクロなら 1,500 円で買えちゃいます。スーパーの平場だとさすがにかっこ悪いけど、ユニクロならみんな買ってるし恥ずかしくない。

もちろん品質には明確な差はあります。でも素人にはそんなの関係ないです。ヘタったらまたユニクロで買えばいいし。

百貨店側は奇策に出るも・・・

すでにショッピングモールに顧客を奪われ苦戦している百貨店は、さらに焦ります。そしてこともあろうに 1 フロア全体に宿敵ユニクロを導入する奇策を打つ館まで。

なお導入条件は、他のアパレルが聞いたら目玉が飛び出るような好条件。それこそ海外ハイブランド並みの。

うーん、そりゃ死ぬよなぁ・・・と。

4. ハレとケの消滅

昔は「ハレの日には一張羅を」というのが当たり前でした。で、せっかくの一張羅だし百貨店で揃えるよね、と。

「ハレとケ」とは、柳田國男によって見出された、時間論をともなう日本人の伝統的な世界観のひとつ。

民俗学や文化人類学において「ハレとケ」という場合、ハレ(晴れ、霽れ)は儀礼や祭、年中行事などの「非日常」、ケ(褻)は普段の生活である「日常」を表している。

ハレの場においては、衣食住や振る舞い、言葉遣いなどを、ケとは画然と区別した。

Wikipedia

こういう書籍もありますが、

でも最近の若い人には馴染みの薄い概念ではないでしょうか。

極端な話、スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグがあんな普段着で一番の晴れ舞台に出て活躍しているわけです。もうオンとオフ、ハレとケの境目なんて無いに等しいですよね。

仮に必要だとしても、それこでモールで揃っちゃいます。レンタル衣装で済ませる人も増えています。わざわざ百貨店で高いお金を支払う必要などないのです。

え?品質?デザイン?シルエット?

年に1回も着ないし別に良くない?って話です。

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いよいよ土俵際なんだし、ガラッと変えちゃえ

以上が百貨店業界が衰退し続けている原因です(衣料品目線)。

結局のところ「変化に対応できなかった」ことに尽きるのかなと思います。今回取り上げなかった EC の件も含め。

そしていままで対応できていない人たちが、これから先革新的に変化していくことができるのでしょうか。

※同じことはアパレル側にも言えますがね。

自分たちの中では、「いやいや、危機意識を持って手を打ってます!」と言いたいかもしれません。

しかし消費者にはなにもしていないように見えています。いくら業界紙やメディアにニュースを載せて、イケてますポーズを取っても意味がないです。ここ 10 年の数字が正直に物語っていました。

「なくなっても消費者は困らない」存在になってきていることを自覚しないと、いよいよまずい。でもそんな土俵際だからこそ、もういままでのしがらみを振り切って大きな変化を起こすチャンスかもしれませんね。

では再見。

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