10月に入り、都内も少しずつ秋が近づいていきたように感じます。
とはいえまだ日中は25度を超える日もあり、まだまだ汗をかく日のほうが多いです。これが最高気温がコンスタントに20度を下回るとニットが恋しくなり、最低気温が15度を下回るとアウターを引っ張り出します。
以前の記事でも書いたように、商品にはライフサイクルというものがあります。アウター(コート)は現在はまだ「見せる期間」にあります。実需期に向けてどれだけ消費者の記憶に刷り込みできるか。それがこの時期の大事な戦略です。
参考▶商品ライフサイクル設定:アパレルマーチャンダイザー(MD)の超重要なお仕事
どこのショップに行ってもアウターの品揃えが同じ
しかしですね、私この時期になると不満に感じることがあります。それはセレクトショップのアウターのセレクトが笑っちゃうくらいに画一化されているということ。ここ何年も変わりません。
※「セレクトショップ」という言葉もちょっと曖昧ですね。今やどこのブランドも少なからず外部買い付けはするでしょから、以後は「ショップ」で統一します。
この時期 80% 以上のショップに並んでいるもの。それがこちら。
カナダグースというブランドの肉厚ダウンジャケットです。
製品としては非常に優れたものですし、このブランドさんには何も文句はありません。しかし私はこの「この時期 80% 以上のショップに並んでいる」という状況がどーにも気に入らないのです。
そもそも Canada Goose (カナダグース)とは
画像:Canada Goose
メイドインカナダにこだわる歴史あるブランド
カナダグースは1957年にカナダで創業。いまでも Made in Canada にこだわって生産を続けているそうです。南極探検隊やエベレスト登山隊などのプロな方々に愛用される一方、近年では上記ウェブサイトからも分かるようにかなりファッション寄りにシフトしています。
確かな品質 × 時代に合ったファッション性が評価され、近年は各ショップでの冬のアウターの定番になっています。
冬のキングオブアウターといえば、保温性と軽さだけ考えてもダウンジャケットがその筆頭に挙げられます。
ブランドの力とマーケットがマッチしてシェアを伸ばす
ダウンジャケットといえばかつては Moncler (モンクレール)が大横綱でした。しかしここ数年、ショップの店頭ベースだけで見るとカナダグースのシェアが非常に大きい状態が続いています。
10年くらい前はこうした光沢感のあるダウンが大人気でした。猫も杓子もモンクレール。特にロング丈のものは富裕層の奥様方の大定番になりました。高いけどいいんです、やっぱり。
一方ここ数年のトレンドはちょっと違うんですよね。あとモンクレール自体が直営店展開に力を入れ出したということもあり、一般的なショップの店頭であまり姿を見なくなったんだと思います。
このように、ブランド自体が培ってきた確かな品質と方向性。それと市場が求めているものがマッチして、店頭でのシェアを拡大してきたというわけです。
そのバイイングにプライドはあるのか
んで話を戻します。
本当にどこのショップに行ってもこのジャケットがどーんと鎮座している状況でして。繰り返しますが、その状況ってどうなの?やってて楽しいのそれ?と思わざるを得ないのです。
差別化など考えてないように見える
消費者に購入の決心をしてもらうためには、究極的には「いま、ここで買う理由」を見つけてあげる必要があります。そのために商品のライフサイクルプランを立てて展開し、販売スタッフは一生懸命接客して再来店を促し、さまざまな販促キャンペーンを打ち、ようやく「いま、ここで買わなきゃ」と思わせることができます。
そのためには「差別化」がものすごく重要になります。「この店にしかないアイテム」は再来店を促す大きな動機になりますし、消費者の記憶にも大きく残ります。
いま 80% のショップに並んでいる、このカナダグースのダウンジャケット。いったいどこに「差別化」できる要素があるんでしょうか。数字が見込めるから、毎年特に何も考えずに安牌として買い付けしてるようにしか見えません。
「とりあえず」セレクトはやめまへんか
もはやセレクトショップのバイイングの矜持など無くなったのでしょうか。差別化などもう必要ないんでしょうか。「いやうちのは丈が違う」「うちのは別注」とか言われてもなぁ。
昔はよかったと安易に言いたくはありません。でもそうした「とりあえず」セレクトはすぐ分かります。少なくとも私は見ていてつまんないですし、そんなショップで買う気は失せます。
今回カナダグースを例に挙げましたけど、ほかにも色々ありますよ。とりあえずニューバランスとか、とりあえずアディダスのスーパースターとか。あれとかそれとか。
あーあ、今年はどこでどんなアウター買おうかな。
追記
この記事を投稿した翌日こんなニュースが。
昨日の今日でなんてタイムリーな。サザビーさんならしっかりコントロールしてくれそう。 / サザビーリーグ、「カナダグース」の独占販売契約を締結 http://t.co/KbtaTcf8j2
— 五反田ひろし (@higotanda) 2015, 10月 6
今後の流通をどうコントロールしていくのか。今年はもうシーズンインしちゃってるし、大きな影響が出るのは来年からかな?
では再見。
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