いろんなアパレル関係者と話すことがありますが、こう言われることが多いです。
いやー厳しい。いいブランドなんて◯◯とか●●以外ないんじゃないの?
アパレルは儲からないよなぁ。
などなど、私の記憶の限りでは 20 年前から同じことが言われています。一見華やかに見えても、良くも悪くもそれくらい厳しい業界なのです。
では「厳しい」というのはなにを指すんでしょうか。多くの場合それは「売上」を指します。
では「売上」はどこで作られるのでしょうか。多くのアパレルブランドの場合、それは「店舗」です。
つまりアパレル不況の最先端にいて、実際の不況を体感しているのは、ショップスタッフなのです。
なのに予算は重くのしかかります。なにを根拠に前年比 2 桁もアップできる予算なのよ!という気持ち、よーくわかります。
でもね、もしかしたらそれ可能かもしれません。
ということで今回は、予算未達でお困りのショップ店長へお送り致します。
店長として確認しておくべきことがある
ああ今月も未達。というか今年一度も達成してない。ああ胃が痛い・・・。とにかく売らねば・・・。
気持ちはわかりますが、それだと来月の予算も達成できないと思います。
時にはがむしゃらにやることも大事ですが、まずは一度落ち着いて、以下のことができているかどうか確かめてみてください。
もしもできていないなら、あなたの店舗はまだ伸びしろがあるかもしれません。
その①:日割予算を精緻に組み立てる
そんなの当たり前だろクソボケカス!という声が聞こえてきそうですが、まぁそんなに怒らないでください。
まさかとは思いますが、月の予算を単純に日で均等割していませんか?まさかとは思いますが。
え?土日祝日で山をつけている?それはすばらしい。
でも月初の土日と月末の土日は一緒と考えられますか?館のフェアはいつですか?新作の納品日はいつですか?それらは予算に加味されていますか?
店長が細かくなくてどーすんの
なに?細かすぎる?でもあなたが細かくなくてどうするんですか。
ただ売ってこい、声かけてこいでは付いてきませんよね。それが予算未達店舗の店長たるあなたです。
自分で組んだその予算は、今月の戦略とリンクする
まずは自分で前述のフェア等の要素を加味し、細かく日割予算を組んでみてください。最初は大変かもしれませんが、まずは自分で作りましょう。
重要なのは「なぜそのような予算を組んだのか」を、自分で答えることができるかどうか。自分で腑に落ちているかどうかです。
そしてその予算はすなわち今月の戦略へとつながります。
その戦略が具体的であればあるほど、店舗のスタッフたちにどう動いてほしいのかが具体的に見えてきます。
たとえば今日の日割り予算が 20 万円だとします。ショップの商品の平均単価が 2 万円とした場合、 10 点販売できれば予算達成です。
1 人 1 点購入していただくもよし、コーディネート販売でセット購入を推すもよし。数字が具体的だとスタッフへの指示も明確になりますよね。
自分も自身を持つことができる
また、自分の頭も整理され、自信を持つことができます。
だってあなた以上に売場をわかってる人なんていないんですから。
そして店長のその自信はスタッフや売場の雰囲気にもつながります。不思議とそういう雰囲気って、お客さまにも伝わるんですよね。
そういう状態にできたら、すごく素敵な売場になっていると思います。
その②:在庫と納品を加味した販売計画を立てる
自分の店舗の在庫数量、在庫金額がいくらあるか把握していますか?
今月なにがどれくらい納品があるのか把握していますか?
極端な話ですが、
今月はこの売筋ニットを 500 枚売って予算取ります!
と意気込んだところで、在庫と納品合わせて 100 枚しかなければ、その目標は達成できるはずはありません。
在庫(納品)とは、すなわち「武器」であると強く認識しておきましょう。
②-1:在庫高をアイテム別に確認する
簡単に見ていきましょう。
まず、今月月初のあなたの店舗の在庫状況はこのようになっているとします。金額はすべて上代にて。
月初在庫高は 1,000 万円あります。
まずはこれが予算を取るための武器の一つであると認識してください。
②-2:アイテム別の売上計画を立てる
次は売上計画です。※本来は期初に立てるべきものですが、今回はご容赦を。
今月はどのアイテムをどれくらい売って予算を達成するのか、仮説を立てます。よくわからない場合は、まずは前年の実績を置いてみてください。それから今年のトレンドや最近の売筋も加味して強弱をつけていきます。
たとえばこんな感じ。
今月は 700 万円の予算をこのような比率で達成したいです。
②-3:納品計画をアイテム別に確認する
今月なにがどれくらい納品されてくるのか、おそらく本部から計画は出ていると思います。それをこれまでと同じように、アイテム別に数量・金額でまとめてみてください。
今月は 600 万円分商品がこのような比率で納品されてくると。
②-4:合体するといろいろ見えてくる
では最後にそれらを合体させてみましょう。横長で見づらいので、金額だけにしました。
月初在庫 1,000 万円+納品 600 万円-売上 700 万円なので、月末在庫は当然 900 万円となります。
ただしあら?ニットの月末在庫がマイナスになっています。ある在庫以上に売れることは物理的にありえません。どうやらなにかがおかしいようです。
考えられる原因は下記の2点です。
- 売上計画が間違っている・・・根拠なく異様に高い計画になっている。
- 納品計画が間違っている・・・売れるはずなのに納品が少なすぎる。
足し算引き算しか行っていないので、至極かんたんな原因です。
その③:販売計画を修正する
ちなみに、計画を立てて満足してしまい、こんなありえない数字でも修正しない人もいます。
月末在庫いくら予定?と聞かれて「マイナス 5 万円です!」と答えると完全にバカと思われるので、自分のためにもちゃんと修正しましょう。
③-1:売上計画が間違っている場合
ニット売りたいのはやまやまですが、さすがに 15% というのは高すぎたかもしれません。現実を見て 5% ダウンさせます。
そのかわり、在庫が潤沢なカットソーでプラス 2% 、コーディネート販売強化すべくパンツにプラス 3% を割り振ることにしました。
修正版はこうなります。
そして在庫と納品と再び合わせると・・・
まだそれでも月末のニット在庫は不安ですが、少なくともマイナスというありえない数字は消えました。
③-2:納品計画が間違っている場合
いやいや!ニットは絶対に売れるって!売らせてくれ!
ということだって珍しくありません。
在庫をどんどん補充してくれないと売り逃しが発生してしまいます。
そしてその場合、あなたは営業担当もしくはディストリビューター、あるいは本部に「ニット納品増やせオラ!」と本気で折衝する必要があります。だって店舗の数字背負ってるわけですから。本気で説得できるはず。
晴れて説得が成功し、納品計画はこのように修正されました。
んで合体。
やはり月末のニット在庫高は心もとないですが、どうにかなりそうです。月初に早急な補充をしないといけませんが。
なんてことも、こうして数字で見ると一目瞭然ですね。
その④:できない理由を探さない
①~③で自分の店舗を数字で丸裸にすることで、健康状態が一目瞭然となりました。
あとはやっぱり店長たるあなたのやる気です。
人間は弱いもので、調子が悪いときは原因を自分以外のところに求めます。
前年はタレントの◯◯ちゃんが着てくれたから
前年は館の大きなフェアがあったから
よく聞くのはこんな感じのこと。これはまだいい方です。
今年は天候が不安定だから
昔は天気のせいにするな!と怒られたものです。
どうも今年はお客さまの消費マインドが低い気がする
あなたは店長じゃなく消費アナリストでしたっけ?
できない人は、自分ではどうにもできない理由を見つけることが超得意です。そんなときだけ異様に細かい。んで上手くいったときだけ自分の手柄にする。
それでは誰もあなたに協力してくれないでしょう。
自分や本部、なんなら他店、使えるものはすべて使ってでも予算を達成するんだという強いやる気。自分が数字を背負ってるんだという責任感。
予算達成できる店長って、結局のところここのパワーが半端ないです。
課題がある、すなわち伸びしろがあるということ
こうして書いてみると、わりと簡単じゃないですか?できそうですよね。
自店が予算を取るために必要なものが明確になりますし、逆に要らないものも見えてきます。だぶついた在庫を他店舗に出して、代わりに自店の売筋をもらうなどのテクニックも生まれます。
でもこうして自店を数値化できている店長は意外といません。店長会議でもすごく役立ちますよ。
参考▶ 将来を不安に思うアパレル販売員に実践してみてほしいこと
ただし数値化するだけでもダメですし、やる気だけでもダメ。接客スキル磨きや商品情報インプットなど、やることは盛りだくさん。
でも楽しくないですか?やること盛りだくさんということは、伸びしろがあるってことです。
全部やりきってダメだったら転職しましょう(›´ω`‹ )
では再見。
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