H&M の妹ブランド MONKI (モンキ) の撤退に見るヤング市場の難しさ

ここ 2 年くらい、アパレル業界の切ないニュースが止まりません。とにかく服が売れない、そんな話はよく聞きます。

だがしかし厳しいのは国内アパレルだけではありません。TOPSHOP が夜逃げ撤退、オールドネイビーとバナナリパブリックも大幅縮小。とにかく服が売れない、マーケットはそんな様相を呈しているようです。

※このへんの話は ファッション業界 カテゴリでまとめて読むことができます。

そんな中、あるブランドの撤退ニュースが追加で報じられました。

MONKI (モンキ)というブランドです。

MONKI = あの H&M の妹ブランドすら日本市場から撤退

たぶんご存じない方のほうが多いと思いますが、この MONKI は H&M の妹分的なブランドです。テイストは H&M よりもカジュアル。そして価格もいくぶん安かったと記憶しています。

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画像:MONKI

見るからにヤングですね。

H&M は性質上ターゲットの幅がものすごく広いです。10 代半ばの女の子から 50 を過ぎた成熟した女性まで幅広く対応します。そのためヤングにとっては「んん?」というデザインもあれば、パターンが大きすぎてうまくフィットしないということもあります。

そのように幅広い層をターゲットにしなければならない H&M から、10代ターゲットに特化したブランド。それが MONKI だったといえます。

ターゲットを絞った分、よりトレンドやストリートを意識したデザインを組み込むことができますし、パターンも修正できます。うまくいけばトレンドに敏感なヤングマーケットのパイを獲得でき、本体の H&M ともケンカせずに棲み分けができると。

その考え自体は至極まっとうだったと思います。しかし結果として MONKI は撤退となってしまいました。なにが誤算だったんでしょうね。

若い子は思っている以上にお金がない

原宿

まず真っ先に思いつくのがこれ。10 代の子なんてお金持ってないです。

実録:地方から来た10代を襲う血も涙もない販売員

具体的に例を挙げましょうか。だいぶ昔ですが、知り合いがラフォーレ原宿の人気店でショップスタッフとして働いてました。当時は景気もよく、どのお店もよく売れていたそうです。

ただどういう子に買ってもらうの?どういう接客をするの?と尋ね、返ってきた答えを聞いてびっくりしました。私の知り合いを幸子(昭和っぽい)としましょう。ターゲットは地方から原宿に出てきた 10 代の子。

幸子「それかわいいよね~!もうラス1だよ!」

10代「でもお金がないんです」

幸子「今日いくら持ってるの?」

10代「5,000円しかないです」

幸子「今日はどこから来たの?」

10代「川越です」←川越の方スイマセン

幸子「そっかー、じゃあ帰りの電車代が◯◯円くらいじゃん?あと昼飯はマックでバーガー 1 個食えばいいじゃん。ほらそしたら全然買えるって!

10代「あ・・・え、うぅ」

幸子「ありがとうございましたぁ~^ ^」

お客様を無一文にして帰らせるという恐ろしいトークです。ショップスタッフ側にも強引さ、そしてあまり深く考えない割り切った考え方が求められる技術。

待っていてお金を落とすほど甘くないということ

いやこのトークの良し悪しは参考情報で、重要なのはそれくらいに「10 代はお金がない」という現実です。そして 10 代の子が持つ数千円ぽっちを、あの手この手で大人たちが奪い合うのです。言い方は悪いけど。

海外ブランドは基本的に販売スタッフを最小限に抑え、VMD で人を惹きつけ、陳列ボリュームで効率化を図ります。それは買う気のある大人にとっては楽でいいです。

しかし使うお金が限られていて、かつ判断力もあまりない若い子に対しては、そうしたショップとは対象的に接客で売るタイプのショップのほうが強いでしょう。

グローバルなトレンドなど若い子には関係ない

ランウェイ

ファッションに関心のある人は、一般的には大人になるほどグローバルなトレンドを意識します。周囲でなにが流行しているかは別にどーでもいい。一方で年齢が若くなればなるほど、興味と優先順位は自分の目の届く範囲になります。

①好きな芸能人が着てる服 → ②好きな読モが着てる服 → ③あこがれの先輩が着てる服 → ④同級生で目立ってる奴が着てる服、みたいに。

つまりグローバル展開している海外ブランドのトレンドなんて、ターゲット層にとってはあまり関係ないんですよね。リアルじゃない。

逆にもしも若い子のファッションアイコン的な人が MONKI のアイテムを身に着けていれば飛ぶように売れるでしょう。ファッション業界のトレンドなんかよりも「誰が来ているか」が重要。

小回りがきかない

仮に企画がハズレてしまった!という悲しい事態になったとします。

日本のブランドならどうでしょう。私ならものすごい短納期で他社の売筋をパクって参考にして店頭に並べます。流行ってるものがない店と思われたら命取りなんで。んでハズレた不良在庫はセールで現金化するかな。

でも海外ブランドは勝手にそんなことできません。数か月先までの納品予定はすでに決まっているので、できることはセールで現金化することくらい。あとは指を加えて時がすぎるのを待つしかない。

こうした小回りがきかない部分も、嗜好性が見えづらい 10 代ターゲットの場合には結構しんどいと思います。

苦しい・嫌な判断ほど先送りせずに早めにジャッジしましょ

閉店

今回はたまたま MONKI でしたけど、これは他のどんな海外ブランドでも当てはまると思います。大箱ドーン!じゃ長続きしません。日本のヤングマーケットはほんと難しいですね。

ただ 2 店舗(実質 1 店舗)のテストマーケティングで、すみやかに撤退という判断を下したことはすごいと思います。「時間が足りない」「もっと店舗数があれば」なんていう『たられば』論はないんですね。

一方日本だといくら不調でも「いや今年 20 店舗出すって新聞にも書いちゃってるし」と、最初に決めたことを何が何でも守ろうとしがち。そして傷口がどんどん大きくなって止血もままならなくなっていく。

でも計画はあくまでも計画。状況を見て、必要に応じて最適なタイミングで軌道修正していかないといけません。

海外ブランドの事例を見ると「そりゃちょっと早くない?」くらいのタイミングが多い気がしますが、結果としてはそれくらいがちょいどいいように感じます。参考にしよ(›´ω`‹ )

では再見。

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