不況から抜け出せないアパレル業界。ワールドや TSI ホールディングスのようにリストラ実施についての IR を出す企業もあれば、オンワード樫山やイトキンのように対外的には何も出さずにリストラを進めている企業もある、ということは以前から何度も言ってきました。
んでその中で実は一番やばくね?と言われていたイトキンが、ファンドの傘下に入ることが明らかになりました。個人的な感想を一言で申し上げると・・・
ようやく。 / イトキン、ファンド傘下へ 「a.v.v」ブランドなど(朝日新聞デジタル) – Yahoo!ニュース https://t.co/i4DPYcvPll #Yahooニュース — 五反田ひろし (@higotanda) 2016, 2月 10
良かったと思います。
買収したファンドはインテグラル株式会社。
もはや死に体だったヨウジヤマモトを支援し復活させた実績があります。アパレル業界に関する知見も少なからずあることでしょう。イトキンもここからが勝負ですね。
ファンドにもいろいろあるのよ
さてさてファンドについて。世間一般的にはファンド=金金金!というイメージが強いかと思います。一時なんとかファンドが世間を賑わしちゃいましたしね。
しかしそうではなく、企業にどっぷり入り込んでリスクも背負いながら業績回復を図り、配当を上げていくというファンドもあります。今回のインテグラルさんもそのタイプなのかなと思います。
では前者のようなファンドが入ってきた場合、いったいその企業にはどんなことが起こるのでしょうか。アパレルを例にあげてみてみます。
①やたらと新ブランド開発
既存の主力ブランドを立て直すのに2年はかかります。数億程度の売上高のブランドならまだしも、数10億規模になると関わっている人間の数も段違い。そう簡単には改善しません。
ただし顧客はいて社会的な認知度安心感も高い。そのためまずは主力ブランドの収益改善の可能性を追求します。ふつうは。
そうして足場を固める。そのうえで満を持して新ブランドを出していきます。
しかし彼らファンドは違います。とにかく新ブランドをデビューさせたがります。IR も記者会見も連発。世間的には「明るいニュース」に見えますし、企業としても「攻めの姿勢」をアピールすることができると。
②やたらと M&A
新ブランド開発もいいですが、それなりに人員を確保しないといけません。既存事業もあり限られたリソースの中では限界もあります。まずい、ニュースがない!
そこで M&A です。できるだけ知名度があって経営難にあえぐ企業がいいですね。豊富な資金を背景に買収を行います。
買収後は社員を数名出向させます。対外的には「人員交流を図りシナジーを加速させます」で明るいニュースのできあがり。
③やたらと若手を要職に登用
一部の例外を除き、基本的にはオッサンは排除されます。排除と言っても首になるとかではなく、要職から排除されるという意味。
その代わりにいきなり若手が要職に登用されはじめます。いやそれ自体は別に良いんですが、問題は「見る目が無い」ということ。そいつはあかんやろという奴でも平気で上に上げます。
それで幸い花開く人間もいるんですが、残念ながら潰れるパターンも多いんですよね。あるいはシャレにならないくらい業績が落ち込んじゃったり。んで結局ベテランのオッサンが復帰して、この期間っていったいなんだったの?状態になるという。
④やたら(関係ない)外部顧問を登用
社長室からテレビで見たことのあるあの人が!ええ?と思ってたら翌日「作家の◯◯さんが◇◇株式会社の顧問に就任」「ミュージシャンの△△さんが〜」なんてニュースを見て初めて知るということも。
外部の新鮮な視点を取り込みたいという意図ならわかります。でもこういう方々って結局現場の人間とはほぼ触れ合わないので、何をしてるのかわかりません。
そんな人達に1人あたり月ウン 10 万円の顧問料を支払っているわけなので、現場の一般社員から変な関係を疑われてもやむなしです。
ただし逆に積極的にコミュニケーションを取りに行く人間も出てきます。そういう人にとっては関係ができて良いことかもしれないですね。
④-2 やたらと外部人材を頼る(内部を信用しない)
上記の芸能人ほどではないにせよ、外部のマーケティング会社やコンサル会社を登用するケースも増えてくることも多いです。
もちろん実績のある会社であればそれは悪いことではないでしょう。
しかし「悪い現状」を招いた過去はすべて間違いであったと考え、上層部が「いまこれから」会社を担う社内の人間の意見を全否定・無視することも往々にしてあります。ぜんぶ●●さんの意見を聞いておけばいいの!みたいな。
そりゃ楽でしょうけど、自分で考えられなくなったら終わですよね。せっかく要職に就けた若手のモチベーションも大きく下がり、離職が進むこととなります。
ぜひ中長期的な目線で再建を
だいたいそんな感じ。
- 主力ブランドからはベテランを外して変な若手を登用しちゃいました。
- 使える若手は新ブランド開発へ。いつ収益化するんじゃい。
- その他使える人間も M&A 先企業へ出向。
結局のところ視点が短期的なんです。1 年でやることやってサヨナラ。長くいるほうがボロが出るからリスクですよね。
彼らにしてみれば、短期で相応のリターンを得ることができればいいわけで。それで自分たちは出て行くし、その企業がどうなろうかなんて知ったこっちゃない。
言いすぎかもしれませんが、あくまでもこれは私が出会った拝金ファンドw のこと。思惑によって良い悪いの見方は変わるという話です。
ふつうにデューデリすれば、んな 1 年やそこらで V 字回復なんて難しいことはわかっているはずです。半年かけて構造改革を行い、半年で負の影響値を受け入れる。その年の決算はもう捨てるくらいで。んで 2 年目からは生まれ変わる!
今回イトキンを支援するインテグラルさんがどういう経営方針を打ち出すかは存じ上げませんが、ぜひ足元をしっかり固め、強い会社になってもらいたいと思います。歴史のある上場企業がそう簡単に潰れちゃあかんですよ。
では再見。
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