イトーヨーカ堂の大規模構造改革を見て我が振り直す

自分が所属していたということもあり、アパレル業界について書くことも多い当ブログ。細かな明るいトピックスはもちろんありますが、全体的には元気がない状態が続いています。大手はリストラ続き。

一方で別業界が良いかというとそんな話もなく、つい先日もこんなニュースが出ていました。

セブン&アイ、イトーヨーカ堂の構造改革発表 5年で40店舗閉鎖、本部人員3割削減

セブン&アイ・ホールディングスは10月8日、イトーヨーカ堂の事業構造改革を発表した。本部人員の3割削減に加え、収益改善の見込めない店舗について今後5年間で40店舗を閉鎖し、人員の適正化も実施する。

(中略)

閉鎖する40店舗は全店舗(国内184店・海外11店)の約2割に当たる。新たな構造改革では、本部人員は削減し、本部機能の一部は店舗に委譲。新規出店 は収益の見込めるSC型、食品特化型店舗に集約する。テナントミックスで品ぞろえを強化するほか、地方店舗では食品を中心に提携企業と連携していく。

ITmedia ビジネスオンライン

大規模事業改革 → 仕入機能を店舗に移譲

change

これまた景気の悪い話です。

アパレルの店舗が撤退するのとは訳が違います。アパレルなんぞ衣食住の中でもっとも後回しでいいもの。方やイトーヨーカ堂は地域住民にとってはもはや立派なインフラ。撤退されたら生活が困難になる可能性も大いにあります。

とはいえ企業としても赤字を垂れ流すわけにはいきません。小手先の改善で数%業績が良くなったところで雀の涙。これくらいバッサリやらないとドラスティックな改善は見込めないし株主も納得してくれない、そういうことなんでしょうか。

しかしこの構造改革でちょっと気になることが。
本部機能の一部は店舗に移譲

とありますが、これは仕入機能を各店舗に移譲するという話だそうです。んん?いまどき???

個店仕入とセントラル・バイイング

スーパーの棚

他店舗展開をしているいわゆるチェーン小売店は、基本的にはセントラル・バイイング方式を採用しています。セントラル=中央、つまり本部の仕入部隊が各店舗共通の品揃えを構成するというもの。

昔は逆に個店に仕入権限があるケースが多かったんです。でも店舗の仕入担当の能力にも凸凹あります。本部の意図とは異なる商品を仕入れたりする場合もあったり、仕入予算を無視して膨大な仕入を行い在庫の山に・・・なんてことが問題になりました。

そりゃそうだと思います。販売業務をしつつ精緻な仕入計画を立て、日々の数字を追いながら最適な仕入を遂行することなんてなかなか難しいでしょう。じゃあ君は販売しなくていいから仕入に専念してね!と言われても、店舗にいればやらないわけにはいかないし。

結局個店の需要に応じた仕入ができるというメリットはありますが、上記のようなデメリットの方が大きいんです。そのため仕入機能は本部に置き、全店共通の品揃えにすることで、各店の負担や在庫リスクを軽減していくというオペレーションになりました。

個店仕入という名の責任放棄の可能性

んで今回改めて。

仕入機能を各店舗に移譲させることに、本当にメリットはあるんでしょうか。不採算店舗は自分の力で頑張れ。ダメなら閉店ね。こういうふうにも見えなくもない。

本部人員を3割削減とのことですが、希望退職を募るなどとは書かれていません。おそらく「本部籍」の人間を減らすということでしょう。つまり「本部籍」ではなく「店舗籍」にするんじゃないでしょうか。

旗艦店や採算店には本部から実績あるしっかりしたバイヤーが異動。だから店舗の仕入機能が移ったとしても、ノウハウも一緒にやってくるので大きな影響はなし。

一方不採算店には・・・推して知るべしです。最悪現存人員で対応せざるを得ない。不慣れな仕入業務に忙殺され・・・アワアワ。

仕入先の負担増 → 同質化の危険

またもっと目線を広げてみると、これはイトーヨーカ堂だけの問題ではありません。もっとも負担を強いられるのは、仕入先(メーカー)なんじゃないでしょうか。そしてそれは結果として同質化につながります。

人的リソースに余裕のある仕入先以外つきあえない

チーム

セントラル・バイイングでは営業担当とその他数名でバイヤーと商談を行えばよかったものが、今後は各店舗と商談を行わなければならなくなります。

ちなみに2015年9月現在の店舗数は国内185店舗。仕入先の担当者はこの店舗すべてと商談しないといけないんでしょうか。現実的じゃないよなー。

完全個店仕入ではなくエリア単位か何かである程度まとまるとは思いますが、それにしても仕入先にも負担は大きくなるのは変わらないと思います。中小はそんなに対応できなくなるでしょうから、必然的に大手の仕入先だけが残る → 同質化へ・・・あれ?最初に戻っちゃった。

同じ商品だらけ

さらに。

小売店というものは、自分で仕入れて自分で陳列し、自分で販売する。人員リスクも負う。だからこそ流通の中で最も大きな粗利益率を確保することができます。

しかし実際は「売ってやっから陳列しに来いや」「販売しに来いや」という小売店も非常に多いです。家電量販店なんてまさにこれ。販売員さんに声かけたら「あ、私メーカーの者なんで・・・」と言われた経験ないでしょうか。

イトーヨーカ堂ではこれまで見受けられませんが、現場の負担が大きくなりすぎると仕入先に対して上記のような負担を強いてくるかもしれません。となるとやはりリソースに限度のある中小は対応できません。必然的に大手の仕入先だけが(略

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ドラスティックな改革 = 末期症状になる前に

泥沼

地域差なんて言うほどない

現場に近い人ほど品揃えの地域差について声高に言いますが、冷静にデータを見ると少なくとも 70% 程度は売れるもんなんて一緒だと思います。経験上。人間北と南でそんなに変わるもんじゃありません。

たとえば全体の 70% はこれまでどおり本部仕入を行う。ちゃんとデータを分析し全体最適を図る。んで残りの 30% の仕入れ枠は各店舗に振り分ける。地域差が必要であればその 30% の中で表現する。地場の仕入先を開拓してもいいわけです。現場と仕入先双方の負担もそこまで大きくなりません。

末期症状になる前に小さなことから改善し続ける

ドラスティックに構造改革をしたほうが、そりゃ良くも悪くも結果は出ます。でも今回は影響が大きすぎるんじゃないのかなーと思うわけです。地域住民にも現場にも仕入先にも。

自分の仕事も同じです。大なた振るう頃にはもう末期症状。のうのうと日常を過ごすのではなく、大小に関わらずいつも課題を見つけ、改善し続けることが重要なんだなとひしひしと感じた次第でございます。明日は我が身じゃ。

では再見。

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