不定期でポストするアパレル業界ネタ。
今回は来訪キーワードで意外と多い、「アパレルセレクトショップの買い付け」に関すること。
セレクトショップを作りたいと思ったら、いったいどこでどうやって商品を調達すればいいんでしょうか。
そもそもなぜ買い付けを行う必要があるのか
その前にそもそもの話から。
ちょっと自分が近所のショッピングモールや百貨店に洋服を買いに行く姿を想像してみてください。そこでお目当てのショップに足を踏み入れたとします。果たしてそこのショップでは「洋服だけ」を販売していますか?
答えは “NO” だと思います。
「コト」提案の説得力を上げるための品揃え補完
いまや洋服単品を販売するショップは皆無で、どこもライフスタイル提案をメインに打ち出します。よく言われることですが、「モノ」ではなく「コト」を提案すべしということ。「このTシャツかわいいっすよね」という提案ではなく、「このTシャツを着て海に行ったらめっちゃモテそうじゃないですか?」という提案といいますか。
かと言ってTシャツだけ見せられても海に行く姿なんて想像しづらい。短パンも必要ですしストローハットも欲しい。サンダルやビーチバッグ、サングラスも。
想像力豊かな顧客ならいいですが、一般的にはそこまで揃えないと具体的なシーンはなかなか想像してもらえないです。
だがしかし自社企画では洋服しか調達することができません。さらに売上構成比上はさほど大きくない商品群なので、わざわざ企画スタッフのリソースを割り当てることもできない。
で、自社の品揃えの補完をすべく、完成度の高い既存の専門ブランドから買い付けるという選択肢が生まれるというわけです。
これがアパレルブランドが買い付けを行う理由です。
コンセプトとターゲットが明確化されてないとブレる
100%買い付けで構成されるセレクトショップの場合でも根本は一緒です。コンセプトとターゲットが明確化されていないのに、単にかわいいからという理由で買い付けを行っても、顧客にはなかな分かってもらえません。
※余談ですが昔はそんなお店が結構あり、通用してました。それは昔はショップ側の提案なんぞ関係なく、勝手に自分で想像できるファッションバカが多かったから。時代の移り変わりってやつですな。
前置きが長くなりましたが、では一般的な手法をご紹介します。
①とりあえず電話やメールでコンタクトを取る
すでに仕入れたいブランドが明確になっているなら、運営する会社に直接コンタクトを取るのが最も手っ取り早いです。メールよりも電話のほうがいいかも。
直営店しかやってなさそうなブランドでも、連絡を入れる前に諦めてはいけません。話をしてみれば実はしれっと卸売をしているケースも多いです。
で、ここから先はビジネスです。礼儀正しく自己紹介を行い、取り扱いたい熱意をしっかり伝えること。
取引条件はシビアな可能性が高い
話が進むと取引条件です。初回で実績のない取引先の場合はおそらく上代の 60% からという場合がほとんどでしょう。最低これくらいは発注してねという金額を提示される場合もありますね。
さらには新設の会社の場合は取引を断られるケースもあります。売掛金の取りっぱぐれは怖いですからね。だから信用ができるまでは COD (Cash On Delivery) = 先払いを要求されることもあります。
いきなり商品を買えるとは限らない
またさらに話が進んだとしても、都合よく販売可能な在庫があるかどうかは分かりません。100%卸売のブランドの場合は、展示会受注以外は生産を行わないケースも多々あります。
その場合は次回の展示会に訪問した後に発注を行うことになるのですが、生産して納品されるまでには3~4か月かかると思っておきましょう。欲しいものが今すぐ手に入るわけではないということ。
・・・このように、お目当てのブランドを導入するためには結構手間も時間もかかるものです。
②合同展示会で新規ブランドを開拓する
新参ショップが仕入先探しに四苦八苦するのと同様に、新参ブランドは取引先探しに四苦八苦します。自社だけで展示会をして集客したとしても、ぽっと出のブランドにわざわざ来る人数なんて知れたもの。営業担当ががんばってもそこには超えられない壁があります。
そのため、主に東京ビッグサイトで半年に一度くらいのタームでアパレル関連の合同展示会というものが開催されます。
ブランドこだわり派には不向きだけど開拓には良い
ショップ運営の立場からすると、こうした展示会に行けば、一度に100以上のブランドをチェックすることができますし、その場で商談も可能なので非常に便利。
しかし大御所ブランドはまず出展しません。中小規模のブランドが主体となりますので、ブランドネームに強くこだわりたいという人には不向きではあります。
一方でそこまでブランドにはこだわらず、あくまでもクリエイションと品質重視ということであれば、特に問題無いと思います。もしかしたら一生付き合っていくブランドと出会うことがあるかもしれませんよ!
③卸売サイトで購入する
有名どころだとこことか。
アパレル・雑貨メーカーから直接仕入れ!卸サイト スーパーデリバリー
ネット上で買い付けて決済までできるサービスです。これは非常に便利。
ただし出品者側からすると、顔の見えない取引先です。ブランドをしっかり理解してイメージを崩さずに販売してくれるかどうかという不安は消えることはありません。そのため著名なブランドがこうしたサイトで卸売をすることはほぼないでしょう。
つまり買い付け作業自体は非常に楽ですが、ブランドを目当てに買い付けするには不向きと言えます。
④バイヤーとなり海外買い付けを行う
昔のセレクトショップはほぼこれでしたね。いわゆる「並行輸入」というやり方です。
並行輸入とは 正規代理店ルートとは別のルートで真正品を輸入することです。 海外の有名ブランド品等を、正規代理店以外の第三者が、外国で合法的に製造・販売された商品を外国で購入し、日本の総代理店契約者等の許諾を得ずに、正規代理店ルート以外のルートで輸入する行為を指します。
オリジナリティを追求できることが大きな武器
もちろん旅費や宿泊費用はかかりますが、それ以上に競合とはぜったいに被らないオリジナリティを追求することができます。「ここでしか買えない」ということは、店舗運営を行ううえで非常に大きな武器です(売れる商品ならw)。
そしてさらに大きいのは価格設定が自由であるということ。正規代理店経由で仕入れる商品は、国内流通価格が暗黙の了解で定められていますが、並行輸入ならそうした縛りがありません。
なので買い付けにかかった経費も価格に盛り込んで吸収することができちゃいます。ただしもちろん何てことないTシャツに6万円なんて価格をつけても売れませんよね。商品の面(ツラ)と価値のバランスを慎重に見ながら価格設定を行う必要があります。
企業力に勝てるかどうか
ただし近年は大手セレクトショップのバイイング網は世界中を網羅しています。そうした大企業の隙間を縫うバイイング活動というのはかなり大変でしょう。ノウハウも圧倒的に負けていますし、実際はこれはなかなか大変ですやね。
人間関係が作られないと良いお仕事にはならないよ
以上がざっと思いつく限りの買い付け方法と、それぞれのメリット/デメリットとなります。①~④でどの方法で買い付けするべきかは、運営するショップのターゲットによるでしょう。
ただ、わざわざアパレルショップの買い付けについて検索してくるような人であれば、それなりのブランドを導入するカッコイイショップをイメージしていると思います。
であるならば①であるように、電話やメールでコンタクトを取る→訪問して商談という流れがベターでしょう。よく「営業は物を売るんじゃない、自分を売るんだ」なんていう格言を聞きますが、買う側だって一緒です。こいつになら自分のブランドの商品を任せても安心だ!と思わせないといけません(もちろんお互いに)。
ということで、検索訪問してくださったセレクトショップ経営予備軍のみなさまの参考になれば幸いです。
では再見。
こんばんは夜遅くにコメント失礼します
現在大学3年のものです。私は新卒でアパレル関係の仕事に就職しようと考えてます。
企業を探してる最中に面白い記事を見つけたので読ませてもらいました。
ファッション好きの私にとってとても参考になりました。
当然なのですが、どうしてバイリングに関してここまで詳しいのでしょうか。
現在就いている企業がアパレル関係なのかが知りたいです!
就活の参考にしたいと考えています。
失礼します。
吉澤直希さん、コメントありがとうございます。
ご参考になったなら幸いです。
いま現在はアパレルではないですが、経験&周りに知り合いがいるだけですよ。
もしもより深く知りたい場合はメールもできますので、問い合わせフォームからお気軽にその旨お知らせください。