BtoC での EC 化率(BtoC 商取引における EC 比率)は右肩上がりで伸びており、2013年度で 3.7% となりました。東京オリンピックが開催される2020年には 6.5% まで伸長し、20兆円市場になるだろうと予測されています。
すげーと思う反面、こんなに EC が広がっている、広がっていく見込みであるにも関わらず、その実で比率は 10% にも満たないという事実。まだまだ伸びていく領域ということなんでしょう。
さてそれくらい当たり前になっている EC サイトですが、実は裏方であまり知られていないお仕事があります。それは「ささげ」と呼ばれるもの。
私はお味噌汁で食べるのが大好きですが、ファッション EC サイトの裏側では、このささげをモデルに食べさせてから撮影に入ることが通例になっています。
もちろんウソですが、EC ではこの「ささげ」を外注するケースが多いんです。そもそもささげとはなんぞや?という話とともに、その理由を見ていきましょう。
ささげの「さ」=「撮影」
EC サイトでは商品写真と説明文章が無いと売れません。特にファッション系では画像の力はすごく強いです。しかし画像が重要だからといって、とにかく何10枚もアップして見せていくという意味ではありません。
重要な事は、お客様自身が自分がその商品を使用している姿をイメージできるかどうか。そして商品単体の物撮りだけでは、とてもイメージさせることはできません。
そう、モデルです。モデル=人間に商品を着用させることで、それを見たお客様は「こんな感じのシルエットか」「私の身長でも大丈夫だな」などと、自分に置き換えてイメージを膨らませることができます。
なので昨今のファッション EC ではモデル撮影は必須であると言えます。
でも自社にモデルを抱えている会社なんて、そうはありません。というかそもそも、機材やスタジオ、カメラマン、モデル、スタイリスト・・・とても自社では揃えられません。
じゃあどうするか?外注しますよね。それがすなわち、ささげの「さ」=「撮影」業務なのです。
ささげの「さ」=「採寸」
例えば家具を販売している EC サイトに寸法の記載が無かったらどうでしょう。いくら気に入ったデザインだとしても、恐ろしくて購入できないはずです。
特に洋服は自分が身に付けるものです。リアル店舗と違って試着というものができない以上、正確な寸法情報はマストであります。
でもね、これって結構大変でして。
洋服を生産するにあたり、当然デザイナーが工場に対して各部分の寸法を指示して生産します。だから採寸情報なんてそれを転記すればいいはずです。
しかしそううまくはいきません。指示寸法と数 cm ずれて生産されてくることも多々あります。やり直し!と言えればいいですが販売期間を考えて渋々そのまま販売しちゃったり。
あるいはそもそも精緻な指示をしないでおまかせで生産する会社もあります。商社に丸投げ~みたいな。こんな適当なブランドは山ほどあります。で、そんなやり方をしていると、当然寸法なんぞ知るよしもありまへん。
でも EC で販売する以上は採寸情報はマスト。例えばパンツであれば、ウェスト/股上/股下/ワタリ/裾幅くらいは必要でしょう。でもそんなの大変・・・。
じゃあどうするか?やはり外注となります。それがささげの2つ目の「さ」=「採寸」業務となります。
ささげの「げ」=「原稿」
素敵な画像もある。採寸データもばっちり。でもそれだけでは物は売れません。
人は買い物をする際、だれかに背中を押してもらいたいもの。リアル店舗では販売スタッフがその役目ですが、EC サイトでは主に原稿がその役目を果たします。
(本当はサイトのデザイン、画像、利便性などすべての要素が関係しますが、ここではわかりやすく)
素敵な画像を見つつ商品説明文を読み、自分がその洋服を手に入れてどんなハッピーな生活になるのか。その最後のひと押しをする重要な役割。つまり「ライティング技術」が物を言います。
ありがちなのが「こんなに良い生地」「すごい技術」なんていう企画担当のこだわりが延々と書かれているもの。気持ちは痛いほど分かるのですが、お客様はそんなこと興味ない場合が多かったりします。つまり読まれない=時間の無駄。
EC で販売する以上は商品詳細文章はマスト。でも自前で書くと非効率すぎる・・・。
じゃあどうするか?言うまでもなく外注となります。これがささげの「げ」=「原稿書き」業務となります。
※実際には外注であがってきた原稿をベースに、ちょっと手直しをしてアップするケースが多いかと思います。
「ささげ」は流れが命
以上がファッション EC における「ささげ」と称される業務となります。
数ある業務の中でなぜこの「ささげ」だけがクローズアップされるのかというと、「流れ」で進めやすいということが大きなポイントとなんですよね。
最初に採寸して、その後にモデル撮影。リアルタイムで画像を見ながら原稿を書くとか。もちろん洋服の種類やモデル手配の都合などで順番は前後しますが、ベルトコンベアのように3つの業務を円滑に流していくことが求められます。
さらに上述してきたように、自社ではやりづらい/非効率な業務でもあるということもあります。そのため、この一連の業務を別会社に丸ごとアウトソースする EC サイトも多いです。
アパレル関係の人なら覚えておいて損はないと思いますよ。自社で「EC 強化するでー!」という指令が落ちてきた時に「ささげはどうしますか」なんて言えばできる奴と思われるかもしれませんw
では再見。
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