アパレル(に限らず)販売職ならば誰でも一度は不安になるのではないでしょうか。
もちろん販売を天職とする方々もいらっしゃいます。UA のあの人とか、ギャルソン某店のあの人とか。
ただ一般的なアパレル企業の販売員は違うと思います。いつかは複数店舗をマネージしたい。いつかは本部勤務になりたい。この先ずっと働き続けていいく意志があるなら、大なり小なり考えているんじゃないでしょうか。
今回はそんなあなたへのアドバイス。
かつては販売員に次のステップなどなかった
まずはちょっと昔の話でもしましょうか。
販売員の次のステップなどなかった
かつては販売職は、なにはなくとも「売れる販売員」になることが重要でした。まず売る。とにかく売る。在庫がなくても売る。販売職の価値はそれがすべてでした。
「売れる販売員」になると、次のステップは「ラウンダー」でした。担当エリアの各店舗をラウンドし、販売スタッフ教育やディスプレイのチェック、本部への報告を行うのが主な役目。
というのは建前で、実際はただの「超強力な代打要員」となっていました。
求めれられている以上は拒否できない
- 来週あの百貨店優待フェアだから行って売上取ってきて!
- あの店ちょっと売上悪いから週末入ってきて!
- 予算達成までもう少しだからなんとかしてきて!
今日はこっち、明日はあっち。せっかく店舗を出れたはずが、移動が増えた分ますますきつくなりました。
本当はこんなことは望んでいなかった。でもせっかく引き上げてくれた会社に恩義も感じているからやめられない。ああ、つらい・・・。
若い子が夢を持てない
昔はこんな人が多かったんですよ(いまもゼロじゃないでしょうけど)。こんなのキャリアアップではありません。そんな姿を若い子が見ても、がんばってもムダだと感じて学びを止めてしまいますよね。
もちろん何も体制を変えずに良いとこ取りだけしようとしている、稚拙な本部が悪いということは言うまでもありません。
特別な感性やカリスマ性は必要ない
では単に「よく売る人」で終わらないためにはどうすればいいんでしょうか?
魅力的なレイアウトを組んだり、すてきなコーディネートを組む特別な感性が必要なんでしょうか?
顧客を掴んで話さないカリスマ性が必要なんでしょうか?
答えは NO です。もちろんあるに越したことはないですが、マストではありません。
①まずは販売力を身につける = 結果を出す
大きくは 2 つあります。まずはこれ。社会人たるもの、結果で語っていきましょう。
予算達成はやっぱり重要指標
まずは与えられた職務で一定以上の実績を残すことはマストです。具体的に言えば、あなたの店舗の予算を達成すること。
もしもあなたがまだ店長じゃないのなら、個人予算の達成を目指しましょう。そして店長を目指してください。
継続的に達成することが重要
それも 1 回や 2 回じゃダメです。月による凸凹はあっていいので、少なくとも半期、年間といった長期での予算達成を目指しましょう。できれば継続的に。
「長期の目標」を「達成し続ける」ことにより、店舗の業績はとても安定します。
大きな会社になるほど、丁半博打よりも、安定した収益を出し続ける = 数字が読める事業を大事にします。あなたの評価も必ず上がります。
ダメならさっさと諦めるのも手
目の前の職務で結果を出せないのなら、その先のステップアップは難しいと思います。向いていないかもしれないので早めの転職を考えたほうがいいかもしれません。全然恥ずかしいことじゃないですよ。
次第に人が寄ってくるようになる
そうして会社はあなたに対して一目置くようになりました。
3 か月に 1 回の店長会議に行くと、ほかの店舗の店長に話しかけられる回数が多くなってませんか?会議で意見を求められる回数が多くなってませんか?本部の企画の人間が意見を聞いてきませんか?
そう、皆が成功の秘訣を知りたがっているんです。
でもここで満足すると、昔のように「販売力があるだけの人」で終わってしまいます。そんな小さなところで満足しないでください。
②の前にかんたんなテスト
では次にやることは・・・の前に、少しテストをします。紙とペンのご用意を。
まずは記憶力
あなたの担当店舗で、先週売れたアイテムトップ3を書き出してください。品番ではなくアイテム(ジャケットとかパンツとか)で答えてください。
次にその中での売筋品番トップ3を書き出してください。特にカラーまでは必要ないです。
制限時間はありませんが、あなたの記憶にあるデータを書き出してくださいね。
店舗の売上データで答え合わせ
・・・終わりましたか?
では次に出勤するとき、その紙を持って行ってください。そして店舗の PC で売上データを確認してみてください。紙に書いてあるものと、データとを見比べてみるんです。
自分の記憶なんてあてにならないことがわかりました
どうですか?書き出したものとけっこう違っていませんか?記憶力のなさにゲンナリしましたか?
いえ、実は違っていて当たり前なんです。
今回は「いかに自分の主観や記憶が不確かなのか」を体感してもらいたかっただけ。
実はここを突破できるかどうかが第一ステップになります。
主観や記憶だけで文句言ってませんでした?
本部の人間は売場に立っていません。ですのであなたとは逆にデータでしか状態を把握することができません。そのため、あなたの店舗でなにがどれくらい売れているのかについては、あなたよりも把握できています。
そんな状態で「あれが売れてて在庫がない」「あの色がいいのに」なんて文句言ったら、本部の人間はどう思うでしょうか。
「データも見れないくせに、あれがない、ここが悪いから売れないだのブーブー言いやがって」
しょせん人間、やっぱりいい気分はしないわけです。
②データを最大限に活用する
ですが、もしもあなたが自分なりにデータを分析したなら、これくらいは言えるはず。
データがあるだけで説得力が増す
昨年および予算と比べて落ち込んだのはカットソーとパンツで、それぞれ 10% 以上落ち込みました。カットソーは昨年は半期の売筋トップ 5 品番はそれぞれ 50 枚以上販売していましたが、今期は 30 枚程度と、全体的にボリュームが落ちました。
予算未達とはいえ、原因が明確であり、具体的な数字で示されています。
単品で見ると、昨年の売筋トップのリピートデザインはやはり今年もトップ 5 には入ったものの、昨年ほどには伸びませんでした。今期の主力として考えて大きく打ち出していたデザインの売上数が伸びなかったのが、大きな誤算でした。
なるほど、ここまで説明されれば、『じゃあなんで今期の主力がコケたんだろう?』と思います。
市場全体でトレンドだったし、ライバル店でも同じようなデザインは出ていたので、方向性は間違っていなかったと思っています。でも当社のものは他社と比べると少し着丈が長く、コーディネートが少し難しかったと感じました。本部指示のコーディネートはもちろん、さまざまなアイテムと組み合わせてアピールしましたが、力及ばず伸ばし切ることができませんでした。
ぶっちゃけ「おめーらの企画がズレてんだよ」と言いたいところです。が、売れないものでも売るのが販売員の仕事。できることはやり切ったが力及ばなかった旨を話します。
こういう言い方をすれば、本部の企画スタッフも聞く耳を持ってくれますよね。
※もちろん目的は、よく思われることではなく企画精度をアップなので、そこは忘れずにどーぞ。
上層部にも効果的にアピールできる
このように、データをしっかり見ることでここまで話すことができます。慣れてくれば、自分の店舗の健康状態がひと目でわかるようになりますよ(本当に)。
そして上層部に対してもアピールすることができます。
- 感覚だけじゃない
- 数字を苦と思わない
- 自分なりに仮説と検証ができている
周りの販売スタッフを見渡してみてください。
みんな感覚だけで話をしていないですか?売れてる・売れてないで終わってませんか?その原因をロジカルに分析することができていますか?
視野も考え方も変わってくるはず
たとえば
これは当たり前。
逆に 2 という結果が先にあったとします。それを見て「ああ、1 + 1 だからでしょ」で終わる人は普通の人です。
でもここまで読んでくれたあなたは、
「 100 – 98 だったかもしれないし、もしかしたら 4 ÷ 2 だったかもしれない。よし調べてみよう。」
という考え方こそが重要であるということが理解できていると思います。
たったこれだけで魅力的な人材になれる
販売力があり、数字にも強くロジカルな考え方ができるなんて魅力的な人材。少なくとも小売を伸ばしたいと考えている企業であれば、エリアマネージャーやスーパーバイザーといった職務への道が開けると思います。
さらに、別にいまの会社にこだわる必要もなくなります。スキルアップし視野が広がったあなたは、会社の出したオファーに物足りなさを感じるかもしれません。
となれば同業界でより好条件の会社へ転職も考えるべきですし、そのときにはすでに実力は備わっているはずです。
なにも資格と取ったり、語学を学んだりする必要なんてありません。少し考え方を変えて視野を広げるだけです。
習慣化することが重要なので、折れずにがんばって
でも、昨日今日でいきなりデータを使いこなせるわけじゃありません。最初はなにをどう見ればいいのかわからないと思います。
それでもいいんです。まずはデータに慣れること。習慣化すること。
わからない部分は営業にでも聞いてみればいいですし、別に私に聞いてもらっても大丈夫です。
なんでも慣れです。日常にしてしまえば苦にならなくなります。ぜひ習慣化し、キャリアアップを目指してみてください。
たぶんここまで読んで「なんだ普通じゃん」と思う人も多いと思います。でもね、みんなできてないんですよ。そこそこ売って、データをただ読んでるだけ。
だからこそチャンスなんです。
では再見。
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