深酒をすると飲み会や帰路の記憶が失くなってしまう理由
深酒をするとスパっと記憶を失くす人がいます。私もその中のひとり。詳しくは前回の記事をご参照。
笑い話で書いてますが、10年くらい前かな?自分は深刻な障害を抱えているのではないか?と不安になりさまざまな書籍を読みました。なるほどーと腑に落ちたものの、やはり自制せねばなと反省したものです。
ということで、今回は「なぜ人は深酒すると記憶を失うのか」について。
人の記憶のメカニズム
結論の前に、まずは記憶のメカニズムを知っておく必要があります。人の記憶には「短期記憶」「中期記憶」「長期記憶」の3種類があります。
長期記憶
記憶番長。生きていくうえで重要であると脳が判断した情報は、長期記憶として脳に残ります。
どれも忘れてはならない記憶です。
ただ長期記憶とて、100% 忘れないという記憶ではありません。たとえば学生の頃のクラスのメンバーの名前。当時は全員言えましたよね。それは当時の状況の中で、記憶として定着させるべき必要な情報だったから。
しかしそれから20年。何人の名前が言えますか?同窓会で会っても当時のテンションで会話できますか?大半を忘れてますよね。長期記憶から抹消されてしまったということです。
その原因も言うまでもありません。いまの生活に特に必要ではない、重要ではない情報と判断されたということです。
長期記憶はこのように、私たちが生活をするうえで欠かせない情報を蓄積しつつも、不要な情報はその時々で適度に抹消=忘れ、一定の容量をキープしているのだと思います。
※なにかのきっかけで一気に思い出すこともありますから、完全に抹消されているという感じでもなさそうでうね。
短期記憶
こちらは長期記憶とはまったくの逆。瞬間的な記憶装置と考えると分かりやすいです。
なお「短期」とありますが、いったいどれくらいの期間なのでしょうか。1時間?2時間?いいえ、一般的には1〜2分と言われています。思った以上に短いですね。
中期記憶
最後がこちら。短期記憶を取捨選択し、一定期間蓄積し、最終的に必要な情報を長期記憶へと引き渡します。ベルトコンベアを想像すると分かりやすいかもしれません。
また「中期」の期間に関しては、長くても1か月程度だそうです。
たとえば仕事。毎月目標達成のため一生懸命働きます。でも2か月前に何をしていたかということは、案外覚えていないものです。もちろん重要な情報は長期記憶として定着しますが、忙しい日々のアレコレは、意外と定着せずに中期記憶レベルで抹消されているのかもしれません。
中期記憶が働かなくなり記憶が捨てられる
さて本題、なぜ深酒すると記憶が失くなるのかについてです。これを簡単に理解するために、まずは記憶のメカニズムについて最初に書きました。
海馬が働かなくなり中期記憶がバカになる
中期記憶はベルトコンベアに似ていると書きました。
実はこの中期記憶、過度にアルコールを摂取すると働かなくなってしまうのです。
なお人間の記憶の格納場所については、下記のように役割分担がなされています。
- 短期記憶・・・海馬
- 中期記憶・・・海馬
- 長期記憶・・・大脳新皮質
過度にアルコールを摂取すると、海馬の働き、とくに中期記憶に関する働きが鈍ります。
記憶が定着されずに捨てられてしまう
工場でベルトコンベアが動かなくなるとどうなるでしょうか。部品はどんどん溜まっていきます。溜め続けてもしょうがないので、生産調整をする必要がありますよね。古い部品は捨てる必要もあります。
1〜2分程度の瞬間的なやり取りはぜんぜん普通にできる。でも過度なアルコール摂取によって海馬の働きが鈍る=中期記憶が機能しなくなるため、記憶は定着せずに捨てられてしまうと。
これが記憶を失くす原因なのです。
笑って済まされる状態でもない
なおこの症状は「アルコール性記憶障害」「ブラックアウト現象」などと呼ばれており、立派な病気?です。
「また記憶飛んだわ、ウハハ!」
男らしく笑い飛ばすのもいいですが、将来的に何かしらの病気を引き起こす原因になるかもしれません。ほどほどにしときましょ。
記憶が無いのになぜ飲み会では普通に会話できるのか
上記が理解できれば、記憶飛ばすほど飲んでいるのになぜ飲み会の場では普通に会話している(らしい)のかも理解できると思います。
短期記憶はちゃんと機能しているから
そう、中期記憶はバカになっていたとしても、短期記憶がちゃんと機能しているからです。人との会話は瞬間的なやり取りですから、短期記憶さえ機能していれば事足ります。
飲み会で同じ話を繰り返すオッサンいませんか?その人は許容量以上のアルコールを摂取して、中期記憶がバカになってる状態なんです。だから30分前に話したことも忘れ、また同じ話を繰り返すと。
さらにその飲み会で話したことはだいたい忘れているので、次の飲み会でも話すというエンドレスループ。
同じ話を繰り返す人へはちゃんと指摘してあげよう
こういう人には、本人のためにもちゃんと飲み会初期の段階で指摘してあげたほうがいいです。でも言い方には気をつけて。
「それ前も聞きましたけど」これはイカン。というか「〜ですけど」が口癖になってる人は治した方がいいです。
「それ前も話してましたよ!記憶飛んでるんじゃないですか?飲み過ぎ!ワハハ!」これくらいは気遣ってあげてくださいw
記憶が無いのになぜ家にちゃんと帰れるのか
となるとこの問いにも答えられるはずです。
重要な情報はベロベロになっても忘れない
冒頭にも書いたように、駅への道順だったり自宅への経路は、重要な情報として長期記憶にしっかり定着している情報です。いくらベロベロになって記憶が飛ぼうが忘れません。だから人は正体をなくすまで飲んだとしても、なぜか家には帰れちゃうんです。
なお自宅すら忘れるくらいになったら、別の病気の可能性があります。早めに病院へ行きましょう・・・。
短期と長期の組み合わせの好例
ちなみに私の場合。ハードな飲み会の帰り、同じ方面の友人とタクシーに乗ったんですが、「その道は遠いからこっちで」「その道は工事中のはずだからあっちで」などと運ちゃんに指示を飛ばしていたそうです。私が先に降りたんですが、友人(年下)のぶんまで多めに払ってバイバイしたと。
これも短期記憶と長期記憶が組み合わさった好例です。道順等は記憶として定着しているし、会話もしっかりできる。でも翌日目覚めると当然どうやって帰ったのか覚えてないし、妙に財布の中身が減っていて「あれぇ?」となるというw
酒は飲んでも飲まれるな
気の合う仲間との飲み会は楽しいです。年末年始はついつい飲み過ぎてしまうことも多いと思います。たまには記憶を飛ばしてもご愛嬌で済むかもしれません。
でも上述したように、それは明らかに身体に変調をきたしている状態であり、自分の許容量をオーバーしていることは間違いありません。
いま大丈夫でも将来どうなるかも分かりませんし、もう自分一人だけの身体じゃありません。私もほどほどにを心がけますので、あなたも過信せずにほどほどに嗜むようにしてください。
では再見。
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